自身の手の痺れが治った例について(何を選ぶか)

 

 

当院にみえる患者さんの愁訴としてはそれほど多くはないですが「手や足の痺れ(しびれ)」というのがあります。

“痺れ”というとすぐに椎間板ヘルニアや脊管狭窄症などによる神経の圧迫が原因と思いがちですが、実際にはそうでもないということが分かってきています。なぜ皆さんがそう思うのかと言えば、今までそれが“常識”であるかのように“教育(洗脳)”されてきたからに他なりません。

ちなみに、神経の圧迫なら基本的に身体の機能の低下が起こります。 (運動神経なら筋力の低下、感覚神経なら知覚が鈍くなるなど。)
また、神経の遮断なら麻痺が起こります。 (運動神経の遮断なら動かせないし、感覚(知覚)神経なら全く感じないなど。)

つまり、「ヘルニア」や「狭窄症」が痺れや痛みの直接の原因とするのはほぼ根拠がないということが分かってきています。これは自覚症状がない人のレントゲンやMRIを撮ってみてもヘルニアや脊柱管の狭窄が確認されるという研究報告から考えても明らかです。(ただ、ヘルニアや狭窄症があるという人はその部位にそれなりに継続的な物理的負担がかかっているという背景は否定できません。避けられる負担であれば上手に避けていただければと思います。)

そんな痺れや痛みですが、症状の特徴や程度によっては病院でオペを薦められる場合もあるようですし、鍼灸治療で改善可能な程度のものもございます。(症状の程度が重要なポイントとなります。)

大切なのは自身の症状に関する情報をきちんと理解し、症状のレベルに応じた適切な医療サービスを選択するということになります。

実はそんな症状(右手の痺れ)が数年前まで自分にも有りました。

自身の手の痺れが出始めたのは、まだ雇われ鍼灸師として働いていた時期でした。痺れが出始めたきっかけ(原因)については当時の状況や背景(仕事の時の姿勢など)から大体想像はついていましたが、「物が持てない」とか「感覚がない」といったレベルではなかったので、しばらくはほったらかしにしていました。

ですがしばらくして、もともと右手の親指と人差し指の皮膚の表面的な軽いしびれだったのが、なんとなく「しびれ痛い」ような感覚も時々出るようになりました。

これ以上悪い状態にはしたくないなと思い、とりあえず地元の鍼灸院に通うようにしました。

なぜ鍼灸院かというと、これには二つの理由がありました。

①自分よりベテランの鍼灸師さんがどういう見立てでどのような治療をされるのか、同じ鍼灸師として興味があったこと。
②最初に病院を選択しなかったのは、その時点で地元の病院を受診しても、たぶん貼り薬や飲み薬が出されるだけだろうなという(様々な情報を元にした自分なりの根拠による)諦めがあったこと。

この二点が挙げられます。

ではどのくらい鍼灸院に通ったかというと、『二年間ほぼ毎週1回』くらいの頻度です。

そして肝心の結果は?というと、特に変わらなかったというのが正直な感想でした。(それなら早く治療院を代えれば良かったんじゃない?という声が聞こえてきそうですが、その点についても後述します。)

ちなみに、当院でこのくらいの頻度(週1回のペース)で通ってくださって、4~5回で効果が全く感じられないような場合は、まず自分がお奨めできる病院か鍼灸院をご紹介させていただきます。(場合によっては問診の時点で先に「病院での検査を優先していただいたり、第一選択肢としての鍼灸治療をお勧めしない」ということもございます。)
というか、効果も無いのに二年間も同様のアプローチ(治療方法)は続けません。
基本的に毎回問診や様々な評価を行って、常に最善と思われるアプローチを考えます。

ですが、特にここで申し上げたいのはそういった事ではなく、本論はここから先にあります。

では、タイトルにあるようにどうやったら「治った」のか?についてご紹介します。

まず、自分の場合はその症状が出る(悪化する)条件というものがハッキリとしていました。

体幹と頭(首)の関係で言えば、相対的に頭を後屈(後ろに倒すこと)した状態か、右へ側屈(横に倒すこと)した状態になると症状が出るのです。

相対的にというのがポイントで、これは立った状態から体を前にかがめた姿勢で視界を広く保とうと頭を持ち上げた場合でもそうなりますし、いわゆる「猫背」の姿勢をとり続ける場合でもそうなります。寝るときに右を下にすれば、普通は枕の高さからして必然的に頭を右に側屈した姿勢になると思います。

私の場合、症状が出る時は大抵そんな背景がありました。裏を返せばその姿勢(体勢)にならなければ症状は出ないわけです。

つまり その症状の一番の原因(悪化要因)とは、そういった『良くない姿勢』や『改めた方が良い習慣』だったと言えるかもしれません。

そう考えて以降は徹底して自分の習慣(姿勢など)を分析しつつ、症状がでたら即その姿勢や体勢を変えるということをひたすら繰り返していました。
(当然それまでもそれなりに姿勢を気を付けたりはしていましたが、さらにそれ以上に徹底してという意味です。)

具体的には以下の通りです。

◎仕事の時や掃除などで前かがみの姿勢になったときに(視野を広く保つためとは言え)頭を持ち上げない。(→相対的に頭を後屈しない。)

その場合はできるだけ目の動き(眼球運動)で代償する。


◎寝るときに右側を下にして寝ない。(→相対的に頭を右に側屈しない。)

そのためには(仰向けでちょうど良い高さの枕は横向きになったときには相対的に低くなるので、)右を下にする場合は枕の下に右腕を入れる等して枕を高くする。

◎読書する時やパソコン・スマホ操作時に猫背姿勢にならないようにする。(→相対的に首を後屈しない。)

なぜ猫背姿勢にになりやすいかというと本やスマホやPC画面を目線より低い位置に置いているからというのもありそうです。ならばその条件を変えて、背筋を伸ばした姿勢で顔の正面近くに本やスマホが置けるような工夫をすればいいわけです。
私の場合は、クッションや台のようなものを利用しています。

それに加えて、 首や肩周りの体操をしょっちゅうやっていました。(これは今でも習慣として続けています

ちなみに それを徹底しだして以降はその症状に対しての鍼灸や指圧・マッサージなどは受けていませんし、現在でも受ける必要性を全く感じていません。

その結果、正確にいつからかは分かりませんが、その徹底した対策を始めて半年から一年後くらいにはそれまでの症状が徐々に気にならなくなり、しばらくすると全く気にならないという状態になりました。

試しに、以前は症状が出た姿勢や体勢になってみてもしびれが出なくなったのです。

ということは、今回の場合第一にやるべきことは 何かしらの治療を受けること(人任せの選択をすること)よりも、その症状が出る原因(背景)に対して「まずは自分でできる範囲のことをやる。自分で改善できる背景は自分で変える」ということだったと言えそうです。(そのためにはまずその時の自分に必要な情報を知ることが大切なのは言うまでもありません。また、症状に対する総合的な見立てや悪化させないためのアドバイスができる医療機関や治療院を選ぶことが重要です。)

当院の公式ウェブサイトにも書いておりますが、症状によっては 鍼灸治療と同時進行で悪化要因(悪い姿勢や習慣)を取り除くことが重要であるとしています。

私の場合もまさにそこだったわけですが、他にも

①治療の内容が適切であったか?

②治療院の選択が適切であったか?

などを検証しなければなりません。

治療を受ける側としては①は自分が決めることじゃないですが、②は自分で決められることなので、本当に何とかしたかったのならその症状の治療を得意とするような治療院を探して選ぶべきでした。

なぜ治らないのに二年間も通ったのかは当時の自分ではあまり深く考えてもいませんでしたが、たぶん単純に「気持ち良かったとか先生のお人柄が良かった」のもありますが、「 ベテランの鍼灸師にかかっていれば治してくれるんじゃないか、、、」とか「 あの治療院は良い」という他人の評価を鵜呑みにしていた等の一方的な(人任せの)期待があったからだと思います。

実はこの視点は非常に大切で、どこの医療機関や治療院にかかっても、確実に最善の医療サービスが受けられて、その結果一定の効果が必ずしも得られるわけではないということです。

ある症状(病態)が出るのには、それなりの背景(原因)が必ずあります。

そして、その背景(原因)には自分の努力によって何とかなるものとそうでないものとがあります。

自分の努力でどうにもならない事柄に関しては基本的に無駄な努力はしないことが重要です。(どう頑張っても自分の意思ではどうにもなりませんからね。)ただ自分でどうにかできる背景(原因)ならば、そこは人任せにしないでまずはやってみるという選択をしてみるのもいいのではないでしょうか。

緊急性の低い慢性的な症状を治すには、諸々の理由から基本的に元々体に備わっている自然治癒力に任せた方がいいです。(※緊急性が高い場合や命の危険があるような状態は迷わず迅速に病院にかかってください。

だだその 自然治癒力が追いつかない時には、なるべく早い段階で その症状の原因となっている「コリ」や「組織の癒着」などの身体の不具合を正確に探しだし、適切な施術(鍼や徒手療法など)を加えるということが必要となります。

その結果、ご自身の自然治癒力が高まり、症状が改善されていくという好循環を導くのが当院の治療の目的であり、理想となります。

そのために患者さん一人一人にそのような症状が出る原因を認識してもらうことを重視して、普段から気をつけていただけるような情報提供を開院以来ずっと続けています。

つまり個人の心構えとしては、「必要な時に必要な分だけ病院や鍼灸院を利用して、普段から自身でできることは自身でやる」というのが重要となります。

今ある症状は何かしらの身体の不調のお知らせです。“症状”そのものが“悪いもの”ではないのです。

「その症状が出る根本的な原因が何かをご自身で察知して、的確にご自身で対処(より良い選択)ができるようになること」が真の意味での根本治療につながりますので、当院はこれからも患者さん一人一人がそうなれるように情報提供をさせていただきます。


最後まで読んでいただきありがとうございます。